川崎病

内科
ケイジ理事長
ケイジ理事長

小さなお子様をお持ちのママ・パパなら1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

熱が長引くと小児科医は必ず頭に思い浮かべる病気です。

主な症状は発熱や発疹(ブツブツ)ですが、この病気の一番怖いところは「冠動脈瘤」という、心臓に血液を送る血管にコブができてしまい、場合によっては大きな後遺症となってしまうことです。

この病気、日本人の名前がついていることからわかるように、日本人が発見した病気で、海外でも「Kawasaki Disease」の名前で通っています。

今日はそんな川崎病について解説してみたいと思います!それでは行ってみましょう👍

どんな病気?

川崎病は1967年に小児科医の川崎富作先生が最初に報告した原因不明の病気です。

4歳以下の乳幼児に多い病気で、最近は年間に10,000人程度が発症しています。

全身の血管に炎症がおきる事で様々な症状が出現します。

その多彩な症状をもとに「小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MCLS)」という呼び方をされることがあります。

(図:慶應義塾大学病院HPhttps://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000624.html

正確な原因はまだわかっていませんが、「なんらかの原因」で免疫系が異常に作用し、自分の血管を攻撃するようになるのだろうと言われています。

原因論としては、

  • 細菌感染説(溶連菌やマイコプラズマなど)
  • ウイルス感染説
  • 環境物質説

などが考えられていますが、まだ特定されていません。

発熱や発疹、目の充血などが主な症状ですが、実は最も気をつけないといけないのは心臓の血管にできる冠動脈瘤です。

上の図の右側の絵のように、ボコボコとしたコブが、冠動脈という心臓に血液を回す血管にできることがあります。

冠動脈瘤ができてしまうと、この中で血液が固まり(血栓といいます)ができやすくなります。

その血栓が血管を詰まらせてしまうとその先に血液が行かなくなり心筋梗塞という、非常に危険な状態になります。

冠動脈瘤が一度できてしまうと、血液が固まらないようにする薬をずっと飲む必要があったり、場合によっては運動制限が必要になったりと、生活に大きな制限や負担が発生します。

従って、川崎病の診療の1番のポイントは「冠動脈瘤を作らないこと」となります。

具体的には、見逃さず早期に発見することと、治療を適切なタイミングで始めることが大事な病気です。

どうやって診断するの?

下記の主要症状が出現したら、川崎病を疑います。

【主要症状】

  1. 発熱
  2. 両側眼球結膜の充血
  3. 口唇、口腔所見:口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
  4. 発疹(BCG接種痕の発赤を含む)
  5. 四肢末端の変化:
    • (急性期)手足の硬性浮腫、手掌足底または指趾先端の紅斑 
    • (回復期)指先からの膜様落屑
  6. 急性期における非化膿性頸部リンパ節主徴

【診断のしかた】

上記の主要症状6項目のうち、5つ以上を満たせば診断が確定します。

あるいは、4つしか満たさなくても、心臓超音波検査で冠動脈に変化があれば川崎病と診断されます。

さらに3つ以下でも、精密検査により川崎病以外の疾患が除外された場合は川崎病と診断されることがあります。

治療は?

最も重要な治療はガンマグロブリンの大量療法です。

ガンマグロブリンというのは、献血から作られる血液製剤で、免疫グロブリンという成分を濃縮したお薬です。これを約1日かけて大量に投与することで、暴走している免疫を抑える効果があります。

免疫グロブリンについての詳しい解説は日本川崎病学会が作成したPDF資料がありますのでご紹介します↓(グロブリンについては本資料を4ページまでスクロールしてください)

このガンマグロブリン大量療法が始まったのは20年ほど前からですが、それ以後は冠動脈瘤の発生が劇的に抑えられるようになりました。

その他には、炎症を抑える「アスピリン」というお薬を内服したり、重症な症例ではステロイドや免疫抑制剤などを併用するケースもあります。

ホームケアのポイント

年に10,000人と聞くと、コドモの熱に敏感になるママ・パパもおられるかもしれません。

熱が出るとすぐ受診したくなるかもしれませんが、この病気、上の6つの症状は一気に出てくるわけではありません。

熱から始まって、徐々に喉や口周りが赤くなって、ブツブツや目の充血などが後から出揃ってきます。

ですので、熱が出た初日に川崎病を診断することはまず不可能で、初期の頃は受診しても喉が少し赤いくらいのことが多いので、「のど風邪かな〜」と経過観察することになります。

その後の観察で、高熱が長引いたり発疹が出現したりすると、小児科医は血液検査で炎症反応をチェックしたりして検査を進めていきます。

その結果、川崎病が疑われた場合は、入院できる医療機関に紹介になる、というのが実際の流れです。

受診するクリニックを何箇所か持っておられる患者さんも最近増えていますが、1軒目の小児科では「のど風邪」と言われたけど、数日熱が続いたので別のクリニックに行ったら「川崎病」と診断された、なんてのは小児科アルアルです。

時々「前の先生の誤診じゃないですか?」などと仰る方もおられますが、これはこの病気の性質上、発熱初期に見つけることはほぼ不可能なので、それは不可抗力というものです。

可能であれば、信頼できるクリニックでじっくりと観察してもらうことをお勧めします。

ケイジ理事長
ケイジ理事長

それほどありふれた病気でもありませんが、私たちのクリニックでも年に数人は見つかる病気です。


経験を積んだ小児科医であれば、症状が揃って来れば見逃すことは殆どありませんが、信頼できるかかりつけ医とじっくり経過をみていくことが何より大切な病気ですね。

難しい病気ですが、ご理解いただけましたでしょうか?

これからもコドモの病気をできるだけわかりやすく解説していきます。

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