夜尿症

内科
ケイジ理事長
ケイジ理事長

夜尿症という言葉はずいぶんと周知されるようになってきました。
ではいわゆる「オネショ」と「夜尿症」はどうちがうのでしょうか?

毎年春には「小学生になってもまだオネショしてるんです」と心配して小児科を受診される方が増えます。

夜尿症の診療は、本人・保護者・治療者も粘り強い対応が必要です。

そのためには夜尿症への十分な理解が必要です。みんなで一緒に勉強して参りましょう。

どんな病気?

オネショとは、睡眠中にオシッコを漏らしてしまうことを指しますが、単に漏らすだけでは病気とは限りません。

夜尿症の定義は様々なものがありますが、おおむね「5歳をこえて頻繁にオネショが続いている状態」と考えると理解しやすいでしょう。

オネショは小さいコドモさんは「して当たり前」ですが、年齢が上がるにつれて徐々に卒業していきます。5歳くらいまでに卒業していく子が多いので、5歳をこえてもオネショしている場合を夜尿症と定義して治療の対象としています。

ただし、5歳では全体の20%が、10歳で5%が夜尿症だというデータもあるため、「自分のコドモだけが異常」と深刻に考えすぎる必要はありません。

夜尿症の中には、大きく分けると

  • 単にオネショの卒業が遅れているだけのケース
  • なにか別の基礎疾患が存在しているケース

があります。

一般的に夜尿症というと、前者を指すことが多く、後者の方がその基礎疾患をまず治療することが先決です。

このブログでは前者の「単にオネショの卒業が遅れているケース」に絞って解説します。

どうやって診断するの?

まずは丁寧な問診からスタートします。

  • 1週間のうち、何回ぐらいオネショをするのか
  • 1回の量は多いか少ないか
  • 昼間のお漏らし(尿失禁)や頻尿はないか
  • 小さい頃からずっと続いているオネショか(途中で治っていた時期がないか)
  • 大便を漏らすことはないか
  • 便秘はないか

と、このような内容の確認から、そのオネショが「単なるオネショ」なのか「別の原因によるオネショ」なのかの当たりをつけます。

同時に、生活習慣についても聞き取りを行い、過剰な水分摂取や塩分・タンパク質の摂取がないか、食事や睡眠の時間帯などの問題がないかなどを確認します。

もしここまでで明らかな問題があれば、その問題を対処します。

問題がなければ、次は実際にどのようなオネショのしかたをするのかを、日誌をつけていただいてオネショのパターン分析を行います。

ここで判断するのは「尿量が多くてオネショする=多尿型」なのか、「膀胱が小さいからオネショする=膀胱型」なのか、あるいはその両方なのかを検討し、病型診断をしていきます。

治療は?

生活習慣に問題がある場合は、薬物療法などの積極的な治療に入る前に、食習慣・飲水習慣の改善に取り組みます。

それでもまだオネショが続く場合は薬物療法やアラーム療法などの積極的治療に進んでいきます。

治療法は様々なものがありますが、

  • 尿量が多くてオネショする多尿型⇒尿量を減らす治療
  • 膀胱が小さくてオネショする膀胱型⇒膀胱容量を増やす治療

という方向性で治療を行っていきます。

サラッと書いてしまいましたが、治療に関しては内容が専門的になりすぎるので、ここでは大まかな治療の方向性や目的だけ理解していただければOKです。

なお、積極的な治療が必要なレベルの夜尿症に関しては、治療開始から卒業まで1〜2年かかることが多いとされています。

ホームケアのポイント

夜尿症治療は、「この薬だけ飲めば治る」というような単純なものではありません。

上記のように生活環境の調整から始まって、本人ならびにご家族の努力(水分制限や日誌記載など)も必要です。

治療期間も1〜2年と比較的長期にわたることも多いので、治療にあたっては本人の治療への意欲がとても重要です。

親が「毎朝の布団の処理が大変だから」という思いだけで治療を希望されても、本人のやる気がなければ治療効果は期待できません。

また、処理の手間が毎日積み重なると、親もガマンできなくなりコドモに辛くあたったり、オネショしないように夜中に無理やり起こしてトイレに行かせたりするケースがありますが、どちらも治療には逆効果です。

ただでも本人は自尊心(プライド)が傷ついています。そこに寄り添ってあげないと、心の発達に大きな影響が後々出てくることがあります。

親の事情だけで治療を考えるのではなく、本人の気持ちを尊重してあげることも夜尿症診療には大切なポイントですね。

ケイジ理事長
ケイジ理事長

修学旅行などの宿泊行事の直前になって「どうしよう?!」と慌てて受診されるケースもありますが、治療には最低数ヶ月の時間がかかるため、あまりに直前の受診だとご希望に添えないことも多々あります。

宿泊の予定などがあらかじめ決まっている場合は、できるだけ余裕を持った早めの受診が必要だということは覚えておいていただければと思います。

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