夏になると多くの人の命を奪う熱中症。
毎年毎年、残念ながら同じことが繰り返されています。
熱中症は正しい知識を持ち、適切な対応ができれば防げる病気です。
今日はしっかり勉強して、あなたの大切な人を守れるようになりましょう!
どんな病気?
人は体温を36〜37℃という比較的狭い温度帯に保つ必要がある生き物です。
気温が暑くなったり、病気や運動をして体温が上昇すると体はさまざまな工夫をして熱を下げようとします。
はじめのうちは良いのですが、あるレベルを越えると、体温が上昇し過ぎて重要な臓器が高温にさらされたりすることになります。
熱中症とはそのような高温状態が持続することで発症する障害の総称です。
ですので、高温環境下に長時間居たとき、あるいは居た後の体調不良はすべて熱中症の可能性があります。
体はどうやって体温をさげるの?
体はさまざまな方法で熱を発散しようとします。
体温を下げる主な仕組みは
- 汗の蒸発による気化熱
- 皮膚表面からの外気への放熱
の2つです。
この2つをうまくコントロールすることが熱中症の予防にはとても重要です。
まずは①気化熱について説明しましょう。
体温を下げるために汗をかきます。汗が蒸発することで「気化熱」を奪って、体温が下がります。
もう一つは②皮膚から外気への放熱です。
こちらは車のラジエーターに例えられることがありますが、皮膚の血管を開いて熱くなった血液を外気近くの皮膚に行き渡らせることで、放射や伝導、対流といった物理作用を使って熱を外に放出します。
どうして熱中症がおきる?
上記のような熱を下げる仕組みも、長時間続くと限度を超えてしまいます。
水分と塩分が十分あるうちは良いのですが、大量に汗をかくと体内の水分や塩分の減少し、汗をかけなくなります。
そうすると気化熱が使えなくなるために、体温が上がります。
水が蒸発するためには、周囲の湿度も大きなポイントになります。
体の周囲の空気が、乾いている時と湿っている時ではどちらが蒸発しやすいか。洗濯物を干す日の天気を想像するとわかりやすいですよね。当然、湿度が高い方が蒸発しにくいので、熱がこもりやすくなります。
熱中症の起きやすさに湿度が大きく影響するという理由はここのあるんですね。
また、体の水分が減ってくると、皮膚に流れる血液が減ります。同じくラジエーターに例えると、冷却水が減ってしまうので、皮膚の表面に熱を運んで放散することが難しくなってしまいます。
ラジエターも、周りの空気の温度が高かったり、空気の動きがない(風がない)と熱を放散しにくくなります。
どういう要因で起きやすいか?
大きく分けると、環境要因・身体要因・行動要因の3つに分けられます。
環境要因
- 気温が高い
- 湿度が高い
- 風が弱い
- 日差しが強い
- 閉め切った室内
- エアコンがない
身体要因
- 乳幼児、肥満、高齢者
- 低栄養状態
- 脱水状態(嘔吐下痢症やインフルエンザなど)
- 体調不良(寝不足・二日酔いなど)
行動要因
- 激しい運動
- 慣れない運動
- 長時間の屋外作業
- 水分補給しにくい行動
どんな症状がでる?
下図の下方にある、「熱失神」⇒「熱けいれん」⇒「熱疲労」⇒「熱射病」という流れで進行していきます。
熱失神とは、簡単に言うと「たちくらみ」です。つまり暑い環境で運動や作業をしていて、「クラっ」としたら、それはもう熱中症の入り口に来たと言うことです。
それでもなお運動や作業を続けていると、血中の塩分濃度が低下して、筋肉の痙攣がおきます。これが「熱けいれん」という状態です。
さらに進むと、心臓に戻る血液が少なくなり、循環血液量が減少し、重要臓器(脳や内臓)への血流が減少することにより、めまい、頭痛、吐き気などの全身状態を伴うことがあります。これを熱疲労といういます。
ここでも適切な対応ができないと、体温が40℃以上に達し、脳を含む重要臓器の機能に障害が起き、体温調節不全、意識障害に至る熱射病となります。
一旦、熱射病を発症すると、救命救急処置を行っても救命ができないことがあるため、熱疲労から熱射病への進行を予防することが重要です。
熱中症の危険信号
下記のような症状が生じている場合には積極t系に重症の熱中症を疑うべきでしょう。
- 高い体温
- 赤い・熱い・乾いた皮膚(全く汗をかかない、触るととても熱い)
- ズキンズキンとする頭痛
- めまい、吐き気
- 意識の障害(応答が異常である、呼びかけに反応がない等)
このような症状があらわれたら、迷っていないですぐに対処することが重要です。
熱中症を疑ったら
①涼しい環境への避難
- 風通しの良い日陰や、できればクーラーが効いている室内等に避難させましょう。
②脱衣と冷却
- 重度の場合
- スポーツや労働の場(つまり熱産生が増えている場合)で意識障害が出ている場合は、全身を氷水に浸ける「氷水浴」が最も体温低下率が高く、救命につながることが知られていますが、これは直腸温などを管理する必要があるので、経験のある医療有資格者がいる状況で行います。
- もしそのような人がいない場合は、水道につないだホースで全身に水をかけ続ける「水道水散布法」が推奨されます。
- 救急車を要請する場合も、到着前から冷却を開始することが必要です。
- 軽症、中等症の場合
- まずは涼しい場所に移し、衣服を緩め、水分と塩分を補給します。
- 皮膚を濡らしてウチワや扇風機で扇いだ理、氷やアイスパックなどで冷やすのもよいでしょう。これでよくなれば軽症と考えられます。
- 自販機やコンビニで、冷やした水のペットボトル、ビニール袋入りの氷、氷嚢などを手に入れ、それを首の付け根や脇の下、足の付け根などに当てて血液を冷やすことも有効です。
- 最初から症状が強い場合、嘔吐・吐き気などで水分補給ができない、処置をしても症状が良くならない場合には、病院に搬送します。
③水分・塩分の補給
- 可能であれば冷たい水を持たせて、自分で飲んでもらいます。
- 大量に発汗があった場合には、汗で失われた塩分も補える経口補水液やスポーツドリンクが最適です。水1Lに1〜2gの食塩を溶かした食塩水も有効です。
④医療機関への搬送
- 意識がぼーっとしていたり、うまく指示が通らないような状態だと、他人が無理に飲ませると水分が誤って気道に流れ込む危険性があります。そのようなときは医療機関で点滴が必要です。
熱中症は結構奥が深い病気です。
まだまだ書ききれていない内容もたくさんありますが、また追々追加していきますね〜。
今日もお勉強お疲れ様でした!
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