一般的には「クループ」という省略した名前で呼ばれることが多い病気です。
症候群なので、さまざまな原因や病態が混じっている疾患ですが、今回はコドモに多いタイプのクループについて解説していきます。
では行ってみましょう!!
どんな病気?
生後6ヶ月〜3歳ごろに多い呼吸器感染症で、正式名称を「喉頭気管気管支炎」と言います。
一般の方には伝わりにくいので、普通は「クループ」と呼ばれることが多いです。
原因はどこにでも居る風邪ウイルスなんです。
いろんなウイルスが含まれますが、最も多いウイルスは、パラインフルエンザウイルスで、そのほかにもRSウイルスやインフルエンザウイルスなどもクループを起こすことがあります。
最近では新型コロナウイルス(COVID-19)もクループを起こす例が報告されています。
そのウイルスによる炎症が鼻やノドでとどまっていれば「風邪」とか「感冒」と呼ばれる状態で済むのですが、炎症が少し喉の奥(下)まで広がって、「喉頭(こうとう)」と呼ばれるところまで及ぶと「クループ」という状態になります。
「喉頭」と言われてもイメージが湧きにくいかもしれませんね。
図をお示しします↓
図の左下に太字で「喉頭」と書かれた場所が、クループの発生部位になります。
このあたり一帯が炎症を起こして腫れたりすることで、特有の症状が出ます。
どんな症状?
クループは風邪の延長線上にあるので、はじめのころは風邪と同じ症状(鼻水、くしゃみ、微熱、軽い咳)で始まります。
鼻と喉から炎症がさらに奥の方に広がって、喉頭にも腫れがみられるようになると、声がれが出始め、金属的なまたはイヌやオットセイが吠えるような異常な響きのせきが頻繁にみられるようになります。
症状の程度は様々です。ときに、気道が腫れて呼吸困難を起こすことがあり、特に息を吸い込むとき(吸気)に顕著になります。
症状が重くなると息を吸うたびにキューキューいう大きな呼吸音(吸気性喘鳴)がします。
患者さんの約半数では発熱がみられます。
これらの症状はいずれも典型的には夜中に悪化する傾向にあり、咳で眠れなかったり、寝ていても目を覚ましてしまうことがあります。
朝には症状が軽快し、夜になるとまた悪化、を繰り返します。初めの3〜4日は夜を迎えるごとに悪化しますが、そこを越えると回復に向かいます。
その頃には咳の様子はケンケンしたかすれた咳から、痰の絡んだ湿っぽい咳に変わっていきます。この咳は少し長引くことが多く、長い場合は1〜2週間続くケースもあります。
どうやって診断するの?
特別な検査は通常必要ありません。
咳が非常に特徴的ですので、待合室でこの咳をしている子がいると、診察室にいても「あ、クループの子がいるな」とわかるほどです。
呼吸状態が悪化し、入院するほど重症化したケースでは、首の(喉頭の)レントゲンを撮ることで、腫れや狭窄の程度を評価することができます。
治療は?
軽症例に対しては、咳止めや痰切りなどの対症療法を中心に、水分補給やお部屋の加湿などで回復をサポートします。
重症例では、喉頭の腫れを減らすためにステロイドの内服や注射を行います。
外来でアドレナリン(ボスミン®️)を吸入することもありますが、効果の持続時間はそれほど期待できないので、施設によってはあまり積極的に行わないケースもあります。
ホームケアのポイント
小児を楽な格好にさせて水分を十分与えましょう。
大声で叫んだり、泣いたりすると声帯に負担がかかって腫れが悪化することがあるため安静にさせます。
室内の湿度を上げる加湿器などを使うと上気道の乾燥を防ぐことができ、呼吸が楽になります。
加湿器がない場合はお風呂やシンクなどで熱いシャワーを出しっぱなしにすれば湿度をすぐに上げられます。寝室では濡れたバスタオルを干すなどすることも有効です。
また、人によりますが、冷たい空気を吸わせると気道が開く可能性があります。冷たい夜の空気を吸わせるために屋外に少し出てみたり、台所で冷凍庫の空気を吸わせたりすると改善することもあります(これは経験則であり、科学的根拠ははっきりとしていませんが、害はないので試してみる価値はあるでしょう)
上記のようなホームケアを試してみても、ゼーゼー・ヒューヒューと苦しそうな呼吸をしている場合や、顔が真っ赤になるほどの咳が続く場合は、夜間急病センターなどを受診する必要があります。
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