小さなお子様を持つママ・パパであれば一度は耳にしたことがある感染症ですね。
風邪の原因ウイルスですが、乳幼児に感染すると咳やゼーゼーなど強い呼吸器症状が出現します。
通常は冬を中心に流行する感染症ですが、2021年は夏に流行しました。
今年も6月からパラパラと出現し始めています。
毎年流行する、ありふれたウイルスですが、小さいコドモは重症化することがありますので、今日はしっかり勉強しましょう!
どんな病気?
RSウイルス(RSV)とは、正式には「Respiratory Syncytial Virus」と表記します。
RSVは世界中に存在し、毎年特に都市部において流行を繰り返す感染症です。
温帯地域(日本含む)においては冬季に流行のピークがあり、初春まで続きます。
本邦においても、例年11〜1月にかけての流行が見られますが、2021年は例外的に6月ごろから流行が始まりました(下図)。
気道感染するウイルスウイルスで、感冒(かぜ)程度の軽症例から、気管支炎、細気管支炎、肺炎などの重症例までバリエーションは広いですが、年齢(月齢)が低いほど重症化する傾向にあります。
ただし、このウイルスは決して珍しいウイルスではなく、毎年増えるウイルスなので、ある調査では1歳までに50〜70%のコドモに感染し、3歳までには殆ど全てのコドモが感染すると言われています。
このウイルスは1度かかったら終わりではなく、何度も感染を繰り返します。ただし、繰り返すたびに免疫のおかげで軽く済むようにはなっていきます。
あまり知られていませんが、RSVは実はインフルエンザのようにA型とB型があり、A型の方が重症化する傾向にあることがわかっています。(ただし、AかBかは感染症専門の研究機関でないと判定はできませんので、通常は気にする必要はありません。)
どんな症状?
通常、感染者と接触してから4〜6日(最大2〜8日)の潜伏期間を経て発症します。
症状進行の典型例としては
- 鼻水が出現
- 咳が出現
- 痰が絡んだ湿っぽい咳が出始める
- 咳がひっきりなしに出るようになる
- 3〜4あたりで発熱するケースも
- ゼーゼー聞こえるようになったり、呼吸回数が増えたり苦しそうに肩で息をしたりするようになる
というような流れで症状が重くなって行きます。
もちろん全例が重症化するわけではないので、3くらいでピークを超えて治っていくケースもあります。
一方、1ヶ月未満の新生児では、感染しても呼吸器症状が見られず、急に哺乳力が落ちたりぐったりしたりして、無呼吸を起こして突然死に至るケースも報告されているため、注意が必要です。
新生児以外にも、先天性心疾患や先天性呼吸器疾患などの持病をもっているコドモは重症化する可能性があります。
どうやって診断するの?
インフルエンザのような抗原検査キット(イムノクロマト法)で、鼻水を検査することで診断が比較的容易につきます。ただし、この検査は必須ではなく、周囲の流行状況や本人の症状経過を総合判定することで、検査をせずとも診断がつくことは往々にしてあります。
なお、このRSVの抗原検査は健康保険で検査できるのは1歳未満と決められています。
時々、1歳以上のコドモさんが、保育園や幼稚園から「検査してもらってきて」と指示を受けることがありますが、健康保険では検査できません。
大半のケースでは、その旨を保護者に説明し保育園・幼稚園に事情をお伝えいただくとご理解いただけることが多いですが、それでも強く求められる場合は自費での検査になります(自費検査代金は医療機関によって異なります)。
治療は?
残念ながら、RSVをやっつけるウイルス薬はありません。
症状の程度や種類に応じて、症状を和らげるお薬を処方します(対症療法)。
気管支が狭くなっている(気管支炎)場合は気管支拡張剤の吸入を行ったり、呼吸状態が悪い場合はステロイドの飲み薬を処方したり、場合によっては入院して呼吸器管理をするケースもあります。
また、これは治療ではなく予防ですが、シナジスというRSVに対する抗体薬があります。
これは重症化するリスクの高い赤ちゃん(低出生体重児や基礎疾患を持っている赤ちゃん)限定ですが、生後数ヶ月の間、毎月注射するという方法があります。
ホームケアのポイント
小さい赤ちゃんほど重症化する可能性がある病気ですので、保育園でRSVが発生している時に鼻水や咳が出始めたら注意深く観察する必要があります。
哺乳力が落ちたり、咳き込みが強くて眠れないなど、症状が重くなってきたら早めに小児科を受診しましょう。
可能な範囲で水分をしっかりと摂り、乾燥が強い季節はお部屋を加湿してあげましょう。
保育園への登園に関しては、法律に定められた感染症ではないので、あくまで個人の状態が優先されます。
法律に準ずる規定としては、厚労省が作成する「保育所における感染対策ガイドライン」というものがあり、それには「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」と記載されています。
いつから保育園に行くかは、その子の症状経過によりますので、かかりつけ医と相談しましょう。
いかがでしたでしょうか?
RSウイルスは、よくある風邪のウイルスの1種ですが、小さいお子様などでは重症化する可能性のある病気です。
注意深く経過を観察し、呼吸状態の悪化などがあれば、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
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