小さなお子さんがいるご家庭では、必需品と言っても過言ではない「解熱剤」。
非常に一般的で使用頻度の高いお薬ですが、そのぶんご質問をたくさん頂くお薬でもあります。
今日はそんな解熱剤の効果や使い方について、Q&A方式で解説してみたいと思います。
では、いってみましょう(^^)
解熱鎮痛薬って、そもそもどんなお薬?
解熱と書いて「げねつ」と呼びます。
一般的には「解熱剤」とか「鎮痛剤」とかと呼ばれることが多いお薬ですが、この手のお薬は解熱作用も鎮痛作用も両方持っていることが多いので、ひとくくりに「解熱鎮痛薬(剤)」と分類されます。
有名なものには、「アセトアミノフェン」「ロキソニン」「ボルタレン」などがありますね。
医学的な分類としては
- アセトアミノフェン
- NSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)
- オピオイド
- 神経障害性疼痛緩和薬
の4種類に分けられますが、風邪や胃腸炎などの際の熱や頭痛、のど痛に使用できるのは1の「アセトアミノフェン」と2の「NSAIDs」のみです。3や4は癌の痛みや神経痛にのみ使われます。
大人用としてよく処方される「ロキソニン」「ボルタレン」「イブプロフェン」などは全てNSAIDsに含まれます。
コドモでも安全に使える解熱鎮痛薬は?
いろんな解熱鎮痛薬が存在しますが、コドモには「アセトアミノフェン」一択です!!
アセトアミノフェンというのは「薬品名(成分名)」です。
クリニックで処方されるお薬は、商品名で言うと、
- アンヒバ
- アルピニー
- カロナール
といったものが有名です。(他にもあります)
アセトアミノフェンは処方箋なしで薬局で購入できるもの(市販薬)もあります。小児用の市販薬の一例をお示ししておきましょう。
- 小児用バファリンCⅡ(ライオン)
- 小児用バファリンチュアブル(ライオン)
- キオフィーバ坐薬(樋屋奇応丸)
- キオリトル坐薬(宇津救命丸)
- こどもパブロン坐薬(大正製薬)
アセトアミノフェンではマイルド過ぎるからと、ボルタレンやロキソニンなどのNSAIDsを使いたくなる方もおられるかもしれませんが、コドモに使用すると重大な副作用が起きる可能性がありますので、絶対にやめましょう!
どんな時に使う?
患者さんにお話しする際には「熱が高くてツラそうなとき」とお伝えしています。
体温の基準としては、一般的な目安としては38.5℃以上とされていますが、平熱には個人差があるため、普段低めの子であれば、38℃でもツラい場合もあります。
ですので、仮に38.3℃でも、熱でしんどそうな時には使用しても問題はありません。
また、頭痛やのど痛に対して使用する際は、熱はなくても使用してOKです。
使い方は?
粉薬はそのまま服用するか、好きな飲み物やゼリーなどと混ぜて服用させます。
坐薬はロケットのような形をしていますので、尖った方を先にして肛門に押し入れ、5秒ほど肛門を押さえます。ゆっくり指を離してみて、坐薬が見えなくなっていれば挿入完了です。
坐薬はロウソクのような脂分で出来ていますので、冷蔵庫から出した直後は固いですが、手で温めてあげると表面が少し溶けて滑りがよくなります。
効果の持続時間は?
使用する量にもよりますが、一般的には持続時間は3時間程度と考えて良いでしょう。
続けて使う場合は何時間あける?
添付文書(お薬の説明書)には「投与間隔は4〜6時間以上」と記載があります。
ただし、ほとんどの小児科では「1日3回まで」と指示されることが多いので、1日24時間あることを考えると、極端に4時間ごとに3回使用すると残りの12時間は使えなくなってしまいますので、現実的には6時間程度は間隔を空けて使用する方が良いでしょう。
兄弟に処方された解熱剤を使ってもいい?
保険診療で処方されたお薬は本人のみが使用できることになっていますので、法的な解釈で四角四面に言うと「ダメ」ということになります。
ただし、夜間や休日などの急な発熱で使おうと思った時、冷蔵庫を探したら誰のものかわからない坐薬が残っているということはよくあることです。
そういう薬があれば「応急処置」として使用することは差し支えないでしょう。
(使用は各自の責任で行なってください。当ブログは責任を負いかねます)
その坐薬に「アセトアミノフェン」「アンヒバ」「アルピニー」「カロナール」という表記があれば解熱剤です。
名前の表記とともに、100mgとか200mgという数字が書いてあります。
簡単に言えば、100mgが10kg用、200mgが20kg用です。
中途半端な体重の場合は体重にあった分量に切って使用する(15kgであれば200mgを3/4個)か、心配であれば少ない方を使用すれば安全です。
保管方法は?
お薬全般に言える注意ですが、高温多湿の場所は避けましょう。
特に坐薬は温度が上がると溶けるので、冷蔵庫での保管が良いでしょう。コドモがお菓子と間違えて食べてしまわないように、冷蔵庫の中でも高い場所で目につきにくい場所に保管してください。
解熱剤の使用期限はどのくらい?
市販薬の場合は外箱に使用期限が明記されているのでわかりやすいのですが、処方されるお薬は使用期限が書いておらず、使って良いのか悩むことが多いと思います。
お薬というのは、厚労省が定める安定性試験というものをクリアして出荷されます。
一般的な飲み薬や塗り薬など(特殊なものは除く)は、未開封の状態であれば製造後3〜5年の使用期限が設定されています。
製造後、お薬は医薬品卸業者と薬局を経由して患者さんの元に届くため、その期間にどのくらいの年月が経過しているかを知ることはなかなか難しいですが、一般的にアセトアミノフェンのような流通速度が早い(回転が良い)お薬は、1年以上経過していることは少ないでしょう(気になるようであれば薬局に確認しましょう)。
つまり一般的には、仮に流通中に1年が経過していたとしても、2年程度は使用しても大丈夫ということになります。
ただし、小児科的には注意すべき点が2点あります。
1点目は成長に伴う体重増加です。
コドモというのは日々成長しています。小児科で処方されるお薬というのは、その時の体重を元に処方量を計算しているので、年月が経って体重が大きくなると必要量が変わってきます。
そういった観点から、ぐんぐんキッズクリニックでは「正しく保管された粉薬や坐薬であれば6ヶ月程度は大丈夫」とお伝えしています。
注意2点目はシロップ剤の劣化についてです。
コドモ用の風邪薬などは、飲みやすさや好みを考えてシロップ剤(水薬)で処方されるケースもあります。実はアセトアミノフェンにもシロップ剤が存在するのですが、原液ではあまり美味しくないので調剤薬局によっては砂糖水を足している場合があります。
砂糖水で割ったシロップ剤は、雑菌が入ると悪くなるので、シロップ剤は長くても2週間ほどしか持ちません。
解熱剤というのは「突然の不意な熱」が出た時に必要になることが多いので、保管性を重視して、ぐんぐんキッズクリニックでは坐薬か粉薬を処方しています。
その他にコツってありますか?
解熱剤を効果的に使うコツが2つあります。
1つはタイミング。
熱が高いと寝つきが悪かったり、食欲が落ちたりしますよね。
ですので、就寝前や食事前には使えるようにしてあげたいものです。使用間隔は6時間だとすると、その前に使うタイミングというのは逆算しておく必要があります。
例えば、21時に寝る子だとしたら、そこで使うことを考えれば、15時以降はできるだけ使わずに過ごす方が良いでしょう(もちろん状態によります)。
もう1つは十分な水分摂取。
アセトアミノフェンというお薬のメカニズムは、「①汗をかかせること」と、「②末梢循環をよくすること」によって体から熱を放散させ、解熱効果を発揮します。
つまり体に十分な水分がないと、汗はかけないし血液も十分回らないので、解熱効果が落ちるのです。
アセトアミノフェンを使用する時には水分摂取も意識しましょう。
いかがでしたか?
非常によく使うお薬の1つですが、意外と知らないことって多いですよね。
熱というのは最もツラい症状の1つです。
備えあれば憂なし。元気な時でも常に備蓄し、使い方も学んでおきましょうね!
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