乳幼児健診などでよくいただくご質問に
- 「1歳超えても乳児用ミルクを飲ませて大丈夫ですか?」
- 「0歳の赤ちゃんにフォローアップミルク飲ませて大丈夫ですか?」
という2つの相反するご相談があります。
どちらも牛乳を原料に作っている乳製品ですが、値段と対象年齢が違うのはなぜでしょうか?
今日はそんな疑問を解消できればと思います。
では行ってみましょう!!
乳児用ミルクとは?
赤ちゃんの栄養源として、WHO(世界保健機関)をはじめ世界各国で母乳が推奨されていることはご存知ですね。
母乳には栄養源としてのメリット以外にも、免疫物質が含まれていて感染防御に役立ったり、親子のスキンシップが図れるというメリットもあります。
しかしながら、さまざまな事情で母乳が与えられない場合に、代わりとして乳児用ミルクを与えることになります。
乳児用ミルクはいろんなメーカーから市販されていますが、どれも非常に厳格なルールのもとで製造・販売されているんです。
そのルールは「健康増進法」という法律に定められています。
その中で、乳児用ミルクは「乳児用調製粉乳」と表現されており(固いですね)、「特別用途食品として、表示の許可基準」が定められており、各栄養素の含有量が厳しく決まっています。
なので、乳幼児用ミルクは決められた通りの配合にしなければなりません。
牛乳成分を主原料にしていますが、糖は乳糖・オリゴ糖に、たんぱく質は乳清たんぱく質を優勢とし、脂肪は植物油・魚油などを使用することによって脂肪酸組成を整えて母乳と同じ成分にされ、更に発育に必要な微量元素やビタミンなどを加えて、限りなく母乳に近づけて作られています。
その分製造コストが高くなるんですね
フォローアップミルクとは?
フォローアップミルクのそもそもの発祥は1970年代のヨーロッパとされています。
酪農が盛んだったヨーロッパでは離乳期に牛乳を与える習慣がありました。
牛乳は安価で非常に良い栄養源なんですが、鉄分と幾つかのビタミンが少ないのが難点で、鉄欠乏に陥るコドモたちがたくさん発生しました。
その対策としてそれらの不足している成分を添加して生まれたのがフォローアップミルクなんですね。これがフォローアップミルク誕生の起源です。
一方、その頃日本では、1980年に「離乳の基本」というガイドライン的なものができましたが、米・豆・野菜を中心とした食生活であったため、それらを組み合わせた非常に手のかかるガイドラインでした。
当時にも乳児用ミルクは存在していたのですが、比較的高価であったことと、食事の西洋化に伴って、離乳早期から牛乳を与えてしまい貧血を起こすケースが増えてきました。
そういう事情があって、日本でもフォローアップミルクが導入され始めました。
両者の違いは?
ここで両者の違いを具体的にみていきましょう。
両方とも牛乳を原材料にして作りますが、目的が若干異なります。
それぞれの目的は、
- 乳児用ミルク⇒母乳の成分に近づけてある
- フォローアップミルク⇒牛乳をベースに不足する成分を添加
という感じになっています。
濃度や構成成分の表はこんな感じ↓
数字だけ見るとわかりにくいかもしれませんが、見てみると確かに母乳と牛乳は鉄分がかなり少ないですよね。
でもまあ、逆にいうとそれ以外は、入っているものはそれほど変わらないんですが、実はお値段が割と違います。
まずは乳児用ミルク↓
標準的な810g缶で1691円です。
お次はフォローアップミルク↓
標準的な810g缶で1398円です。
およそ20%くらいの価格差がありますね。
たかが20%と思われるかもしれませんが、毎日飲むものですから、トータルすると大きな差になります。
乳児用ミルクを1歳以上の子に飲ませても大丈夫?
わざわざ1歳をこえて乳児用ミルクを買う方はほとんどおられないと思いますが、
「特売やまとめ買いで安かったのでたくさん買ったら、意外と飲まずに余ってしまった」
「赤ちゃんが飲んでいるのをみて、兄(姉)が飲みたがるようになった」
というような場面はわりとアルアルですよね。
こっちのパターンは全然飲ませてもらって大丈夫です。
大量に買って余ってしまったら、お料理に使ってもらっても全然大丈夫。問題はコストだけです。
フォローアップミルクを赤ちゃんに飲ませても大丈夫?
こっちのパターンは、基本的にはNGとされています。
2つ理由があります。
①フォローアップミルクは、乳児用ミルクと比べると、たんぱく質と炭水化物が多く、カルシウムも2倍近く含まれています。赤ちゃんに適切な栄養バランスを満たしていません。
②微量元素も問題になります。乳児用ミルクには成長に必要な銅と亜鉛が入っていますが、フォローアップミルクには含まれていません。
そういった問題があるため、日常的にフォローアップミルクを赤ちゃんの成長のために与えるのはよくないとされています。
もちろん、災害などで乳児用ミルクが手に入らなかったり、お出かけ中でフォローアップミルクしか手に入らなかったりというように、一時的な事情で短期的にフォローアップミルクを与えることはそれほど問題ありません。
フォローアップミルクは絶対飲ませないといけない?
「フォローアップ」というネーミングが、「これを飲ませないとフォローアップできない?」と思わせてしまうのか、時々このような質問をいただきます。
上のフォローアップミルクの項を読んでいただいた方にはご理解いただけたかと思いますが、あくまでも「牛乳や食事で足りない成分を添加したミルク」ですので、いろんな食材をバランスよく食べてくれるお子様には必ずしも必要というわけではありません。
逆に、好き嫌いが激しかったり、食事が進まずミルクからまだ離れにくいお子さんなどはフォローアップミルクを使用しても良いかもしれませんね。
いかがでしたでしょうか?
同じ牛乳を原料として作る「乳児用ミルク」と「フォローアップミルク」。
その違いをご理解いただけましたでしょうか。
それぞれのミルクにはそれぞれの存在理由があります。
違いを知ってよりよい栄養を与えてあげましょうね。
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