アトピー性皮膚炎(総論)

アレルギー科
Egg allergy. young woman wearing a respiratory mask displaying symptoms of a severe egg allergy affecting her by smelling a product
ケイジ理事長
ケイジ理事長

日本国民であれば誰もが知っている、あまりに有名な病名です。

でも、ちゃんと説明できるかというと、、、ですよね。

今日の授業では、みなさんにアトピー性皮膚炎というものが何なのかをちゃんと理解していただいて、お友達や家族に説明できるようになっていただきましょう!

どんな病気?

皆さんの中には「アトピー」=「皮膚炎」と理解しておられる方も多いのではないでしょうか。

実はこの「アトピー」という言葉は、「アレルギー」という言葉と同義語です。

「皮膚炎」というのは別名「湿疹(しっしん)」ともいいます。かゆみ・赤み・ブツブツを伴う皮膚の炎症のことを言います。

つまり「アトピー性皮膚炎」というのは「アレルギー性皮膚炎」と読み替えることもできます。

アトピー性皮膚炎の話を診察室ですると、ママ・パパからすると「治る」か「治らない」かという点がすごく気になるようですが、この答えはYesでもありNoでもあります。

最も新しい考え方では、アトピー性皮膚炎の原因は

  • 皮膚のバリア機能の低下
  • アレルギー体質

の2つであると考えられています。

バリア機能の低下というのは少し難しい言葉ですが、超簡単に言うと「肌が弱い」ということです。

皮膚の構造というのは下の図のような形をしています。

(図:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021)

「角層バリア」と「表皮バリア」という物理的な防御壁があるんですが、これが弱いことで皮膚の中にいろんな刺激が入りやすくなり、炎症を起こしやすくなるんですね。

肌が強いか弱いかというのはその人の体質なので、そういう意味では治るものではありません。

ただし、皮膚に肌にダメージを与える要因を取り除いたり、お薬で皮膚の炎症を抑えるなどして、皮膚を健康に保つことはできます。

医療用語で、完全に治ることを「治癒」と言います。

似た用語に「寛解(かんかい)」という用語があります。こちらは様々なケアにより、症状のない「治癒に近い状態を維持する」ということです。

そういう視点で捉えると、アトピー性皮膚炎は「治癒をめざす病気」ではなく、「寛解をめざす病気」と言えるかもしれません。

どうやって診断するの?

アトピー性皮膚炎診療ガイドラインによると、この疾患の定義は

増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ

という表現がなされています。

、、、なんとなく解りにくいですよね。

ということで、思い切ってもっとわかりやすい表現に変えてみると、、、

アレルギーが関係している、痒みのある繰り返す湿疹

という感じでしょうか。もうこれ以上簡単には出来ません(笑)

アトピー素因というのは簡単にいうと「アレルギーの家族歴や既往歴」です。

本人自身がアトピー性皮膚炎以外に何かアレルギーがあったり、家族にアレルギーをもった人がいたりすることを言います。

通常、アトピー性皮膚炎は左右対称のことが多いとされています。

アトピー性皮膚炎には年代ごとに発生部位に特徴があって、

  • 乳児期:頭,顔にはじまりしばしば体幹,四肢に下降
  • 幼小児期:頸部,四肢関節部
  • 思春期・成人期:上半身(頭,頸,胸,背)に皮疹が強い傾向

という感じで変化していきます。

治療は?

アトピー性皮膚炎はその名の通り「皮膚の炎症」ですので、炎症を抑える治療が主体となります。

治療は大きく分けると

  1. 原因物質・要因の除去
  2. バリア機能の補強・改善
  3. 炎症に対する治療

ということになります。

1の原因物質・要因の除去というのは、皮膚に触れるアレルゲンだったり、化学物質だったりを除去する(減らす)ということです。卵アレルギーがあれば卵を除去する(減らす)。ダニアレルギーがあれば布団や室内をきれいにする。化学物質に敏感な方は無添加のシャンプーや石鹸を使う、などですね。

2のバリア機能の補強は、ワセリンや保湿剤などで皮膚の水分を蒸発しないようにしたり、物理的な防御力を高めたりすることです。

3の炎症に対する治療というのは、副腎皮質ステロイドなどの抗炎症作用がある塗り薬を塗って、炎症を抑える治療です。(具体的な塗り薬の治療に関しては、改めて記事にします)

これら3つの治療を組み合わせて、皮膚を健康な状態に保って「寛解」を維持することが治療のポイントとなります。

ホームケアのポイント

アトピー性皮膚炎のコントロールのポイントは、スキンケアと痒みのコントロールに尽きます。

痒みを速やかに消さないと、痒い⇒掻く⇒炎症を起こす⇒痒い⇒掻く⇒🌀の悪循環に陥ってしまいます。

また、慢性的な痒みがあると、睡眠不足になったり、イライラすることで精神発達に影響を及ぼしたりします。

最近はアトピー性皮膚炎の治療も進歩してきて、副作用の少ない塗り薬や、劇的に症状が楽になる内服薬なども出て来ました(これは今のところ大人だけですが)。

信頼できるかかりつけ医とタッグを組んで、アトピー性皮膚炎をしっかりコントロールしていきましょう!

ケイジ理事長
ケイジ理事長

いかがでしたか?

アトピー性皮膚炎というのは、診断して終わりというような病気ではなく、診断してからのコントロールが重要です。

また近いうちにアトピー性皮膚炎の治療について、深く掘り下げてみますね。

お楽しみに〜。

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