毎年、冬の音が近づいてくるとその姿を表す冬の感染症の代表選手「インフルエンザ」
新型コロナウイルスに対する徹底した感染対策により、2020年&2021年の秋〜冬は流行しませんでした。
しかし、2022の秋〜冬には2年ぶりに流行することが予測されています。どうして今年は流行するのでしょうか?
2年ぶりのインフルエンザですので、流行する前に今一度勉強し直して、来るべき波に備えましょうね👍
どんな病気?
「インフルエンザ」というのは実は「病名」です。感冒や気管支炎と同列に扱われる名称です。
病原体は「インフルエンザウイルス」です。
つまりインフルエンザウイルスが引き起こす気道感染を「インフルエンザ」と言います。
名前の由来は「Influence」で、直訳すると「影響」という意味です。
流行が周期的にやってくることから、16世紀のイタリアの占星家たちは星や寒気の「影響」によるものと考えたのが由来と言われています(諸説あります)。
歴史などで習ったかもしれませんが、大昔から世界的な大流行が起こって多くの人が亡くなる疫病でした。
これまでわかっている大流行について図で示します↓
- スペインかぜ(1918年〜1956年):全世界で6億人が感染し、4000〜5000万人が死亡したと言われる。
- アジアかぜ(1957年〜1967年):感染者数は不明。世界での死者は100〜200万人。日本では300万人が感染し、約5700人が死亡したとの記録がある。
- 香港かぜ(1968年〜1976年):世界での死者数は50万人。
- 豚インフルエンザ(新型インフルエンザ):2009年〜
最後の豚インフルエンザ(新型インフルエンザ)は現在では多くの人に広がり、季節性インフルエンザと変化してしまいました。
どんなウイルス?
インフルエンザウイルスはRNAウイルスです。
トゲトゲのついたカプセルの中に、設計図(RNA)が8本入っています。
インフルエンザウイルスは変異しやすいウイルスで、表面のトゲトゲ(HAスパイク)の形がほぼ毎年変わります。
これが変化することで、人間の免疫システムの追跡をかわしているんです。
インフルエンザウイルスの変異は2パターンあります。
- 連続変異
- 不連続変異
連続変異というのは、ヒトからヒトに感染・増殖を繰り返す間に起きる変異のことを言います。毎年流行株が少しずつ変化するのは、この連続変異が原因となります。
もう一つの不連続変異というのは、それまでヒトの間で流行していたウイルスとは大きく異なる型のウイルスが突然出現する現象のことです。
実はインフルエンザはヒトだけに感染するのではなく、自然界の哺乳類や鳥類に広く感染を起こします。
ある程度、「種ごとにかかりやすい型」というのはあるんですが、時々種を越えて感染してしまうことがあります。
まだまだ記憶に新しい2009年の新型インフルエンザは、当時「豚インフルエンザ」と呼ばれていましたが、豚の間で感染していたインフルエンザウイルスが、ある時ヒトに感染するようになったんですね。
鳥インフルエンザも毎年養鶏場で感染が発覚しますが、あれもヒトに感染して、その後ヒトからヒトへうつるようになってしまうと「新型インフルエンザ」と呼ばれるようになります。
どんな症状?
インフルエンザウイルスの感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、
- 発熱(通常38℃以上の高熱)
- 頭痛
- 全身倦怠感
- 筋肉痛・関節痛
などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き、約1週間の経過で軽快するのが典型的なインフルエンザです。
いわゆる「かぜ」に比べて全身症状が強いとされています。
とくに、高齢者や、年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が低下している患者さんでは、原疾患の悪化とともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなることが知られていて、入院や死亡の危険が増加します。
小児では中耳炎の合併、熱性痙攣や脳症などを誘発することもあります。
どうやって診断するの?
上記のような症状が出現したら、医療機関を受診して、鼻水を採取して検査を行います。
最近のは非常に反応速度が速いので、最短5分で結果が判定できます。
ただし、鼻水の中にいるウイルスが少ないとラインがはっきりと現れないこともありますので、発症後6〜12時間程度経過してから検査した方が、正確性が向上します。
治療は?
健康な人であれば、基本的には自然に治癒しうる病気ですので、全身状態が比較的よければ、熱や痛みなどを抑える解熱鎮痛剤や、咳止め・痰切りなどの対症療法を中心に治療を組み立てていきます。
一方で、全身状態が悪かったり、重大な基礎疾患を持っている方であったり、早く治癒に持っていきたいケースなどでは抗ウイルス薬を使用します。
インフルエンザウイルスに効く抗ウイルス薬は、現在5種類あります。
- タミフル:内服薬(1日2回、5日間)
- リレンザ:吸入薬(1日2回、5日間)
- イナビル:吸入薬(1回のみ)
- ゾフルーザ:内服薬(1回のみ)
- ラピアクタ:点滴薬(1回のみ)
ただし、繰り返しになりますが、インフルエンザは健康な人であれば基本的には自然に治癒しうる病気ですので、軽症であれば必ずしもそれらの抗ウイルス薬が必ずしも必要というわけではありません。
信頼できるかかりつけ医と相談しながら、状態にあった治療法を選択することが大切です。
学校や保育園はいつから行っていいの?
学校保健安全法という法律に定められた出席停止になる感染症です。
出席停止の期間は
発症した後5日を経過し、かつ、解熱後2日(幼児にあたっては3日)を経過するまで
と定められています。
行政のカウントのしかたが一般の方にはなれないのですが、「発症した日を0日」とするという大前提があります。(これはコロナで少し慣れて来たでしょうか?)
「発症後5日を経過するまで」という部分は、その後5日間は休んで、「6日目からOK」ということを示しています。難しいですね。
もちろん、後半部分がありますので、熱が長引くとそれだけ休まないといけない日が延びます。
ホームケアのポイント
自宅では安静を保ち、水分をしっかり摂るようにしましょう。
インフルエンザの合併症で最も怖いのはインフルエンザ脳症です。
意識が朦朧としてきたり、痙攣したりした場合は、脳症を起こしている可能性があります。
注意深く観察し、異変を感じたら早めに主治医に相談するようにしましょう。
予防方法は?
インフルエンザの予防には、なんと言ってもワクチンが欠かせません。
インフルエンザワクチンの作用メカニズムから考えられる主目的は「重症化予防」ですが、統計学的に結果をみると、感染拡大防止効果も認められています。
通常、初夏ごろに次の流行株の予測が発表され、それを元にワクチンメーカーが製造を開始します。
それが各医療機関に配られ、10月中旬ごろから接種が開始されます。
生後6ヶ月〜12歳までは2回接種。13歳以上は1回接種を推奨されています。
予防効果は5ヶ月程度持続すると考えられています。
いかがでしたか?
この2年間はインフルエンザがほとんどなかったので、ずいぶん記憶が薄れてしまった方も多いのではないでしょうか。
今年の秋〜冬はコロナだけではなく、インフルエンザにも注意が必要です。
感染対策を今一度しっかりと行い、元気に乗り切っていきましょうね!
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